今、どんな気持ちですか ?
お金を貸して返されず、相手に飛ばれた心境を書き残す
人にお金を貸すという行為は、単なる金銭のやり取りではなく、その背後に「信頼」や「友情」や「人間関係」という目に見えない価値が存在するものだと、私は思ってきた。貸す金額が1万円であれ10万円であれ、そこには「返してくれるだろう」「約束は守ってくれるだろう」という期待と信頼が込められている。だからこそ、その信頼を裏切られた時の心の痛みは、金額以上に深く重い。
今回は、私自身が実際に体験した「貸したお金が返ってこないまま、相手に逃げられてしまった出来事」をここに書き残しておきたい。これは単なる愚痴でもなければ、弱音を吐くための記事でもない。むしろ、自分の中で整理できない気持ちを言葉に変えることで、少しでも前に進むための作業だと思っている。そして、同じように誰かに裏切られた経験を持つ人に、「自分だけじゃない」と感じてもらえるきっかけになればと願っている。
◆「貸す」という判断の裏にあったもの
お金を貸したのは、決して軽い気持ちからではなかった。もちろん「二度と返ってこないかもしれない」というリスクは、心のどこかで理解していた。それでも貸す決断をしたのは、その人との間に築いてきた人間関係があり、困っている姿を目の前にしたら「助けたい」という気持ちが勝ってしまったからだ。
相手が発した言葉――「必ず返すから」「今は本当に困ってるだけで、来月にはちゃんと返せるから」――その一つひとつを私は信じた。いや、信じたというより、信じたかったのだと思う。人を疑うより、信じる方が心は楽だし、関係を続けたいという気持ちもあった。
金額は6万円。決して少額ではない。けれど「信じて貸した」その事実に価値があった、と当時の私は考えていた。
◆待つ日々と小さな不安の芽
貸してから数日、私は連絡を待った。返済期限が迫っていたわけではない。ただ「ありがとう」という一言や、「今はまだ難しいけど必ず返す」という近況を聞くだけでも安心できたはずだ。
しかし、連絡は思った以上に来なかった。こちらから送ったメッセージに対しても、既読がつかない日が続いた。最初は「忙しいのだろう」と思おうとした。だが、心の奥底では、何か良くない方向に進んでいるのではないかという小さな不安が芽を出し始めていた。
やがてその不安は現実となった。相手の連絡先は遮断され、働いていた会社も突然辞めたという情報を耳にした。いわゆる「飛んだ」というやつだ。
◆「裏切られた」という言葉の重さ
その瞬間の心境を言葉にするのは難しい。怒り、呆れ、悲しみ、虚しさ――いろんな感情が一度に押し寄せてきて、胸の奥が鉛のように重くなった。
6万円という金額は、私にとって決して小さくない。生活費にも影響するし、あればやりたいことに使えた金額だ。しかし、それ以上に「信じた相手に裏切られた」という事実が心をえぐった。
「なぜ信じてしまったのだろう」
「自分が甘かったのだろうか」
「貸した自分が悪いのか」
そんな自責の念も湧いてくる。けれど同時に、「悪いのは約束を破って逃げた相手だ」という怒りも消えない。この二つの感情の間で揺れ続け、心が落ち着かない。
◆人間関係の終わり方としての「飛ぶ」
人間関係には、いろんな終わり方がある。自然に疎遠になることもあれば、喧嘩別れすることもある。だが、「お金を借りて逃げる」という終わり方は、あまりにも後味が悪い。
そこには「ありがとう」も「ごめん」もない。ただ、一方的に連絡を断ち、姿を消す。残された側には、使われたという感覚と、空っぽの虚しさだけが残る。
私はこの出来事をきっかけに、人にお金を貸すことの意味を改めて考えるようになった。結論として、「本当に返ってこなくてもいいと思える金額しか貸してはいけない」という教訓にたどり着いた。信じたい気持ちは尊いが、それが裏切られたときのダメージをゼロにはできないのだ。
◆心の整理と「学び」に変える作業
時間が経つにつれて、怒りや悲しみは少しずつ薄れていった。しかし、完全に消えることはない。ふとした瞬間に思い出しては、胸の奥にチクリとした痛みが走る。
だからこそ、こうして文章に書き出している。誰かに聞いてもらうことで、少しでも自分の気持ちを外に出すことができるし、同じように傷ついた人に「あなたの気持ちもわかるよ」と伝えられるかもしれない。
人生の中で「裏切られる」という経験は避けられないのかもしれない。だが、その経験をどう受け止め、どう次に生かすかは自分次第だ。私はこの出来事を「人間関係を見極める目を養う学び」として捉えることにした。
◆今の私が思うこと
正直に言えば、まだ完全には吹っ切れていない。返ってくる見込みのない6万円のことを考えると、今でもやるせない気持ちになる。
それでも、人生の中で「信じた相手に裏切られた」という事実は、私を強くするはずだと信じている。次に同じような場面に立たされたとき、もっと冷静に判断できる自分でいたい。
そして何より、「お金を貸すほどの信頼関係」は大切にしたいと思っている。お金が絡むと関係は壊れやすい。だからこそ、貸すことも借りることも、本当に慎重であるべきだ。
◆最後に
お金を貸して返されず、相手に飛ばれる――経験した人にしかわからない独特の苦しみがある。金額以上に心が傷つき、信じていたものが崩れ落ちるような感覚に襲われる。
けれど、その痛みを経て、人はまた一歩強くなれるのかもしれない。裏切られた経験を抱えながらも、人を信じる心を捨てずに生きていけるかどうか。それが、今の私の小さな課題であり、これからの生き方の軸になる気がしている。
ここまで書いて、少しだけ肩の荷が下りた気がする。きっとこの出来事を完全に忘れることはできないだろう。それでも、自分の人生の一部として受け止めていくしかないのだ。
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